構造生物学:X線結晶構造から明らかになった、細胞に内在するアロステリックβ2ARアンタゴニストの作用機序
Nature 548, 7668 doi: 10.1038/nature23652
Gタンパク質共役受容体(GPCR)はそのオルソステリックポケットの構造に高度な相同性があり、これがGPCRを創薬の対象とする際に非常な難問となっている。この問題は、9種類のアドレナリン受容体のような、単一のサブファミリーに属するGPCRの場合に殊に難しくなる。アロステリックリガンドならば、これらの受容体のこれほど保存されていない領域に結合する可能性があるので、選択性がより高くなるかもしれない。また、アロステリックリガンドは、シグナル伝達を持続的に活性化または阻害するオルソステリックリガンドとは異なり、ホルモンや神経伝達物質への生理的応答を調節しているので、不都合な影響がより少ない可能性がある。これまでに報告されているGPCRの結晶構造の大半は、オルソステリックなアンタゴニストに結合した受容体について得られたものであり、アロステリックリガンドに結合した構造は数例しか報告されていない。Compound 15(Cmpd-15)は、β2アドレナリン受容体(β2AR)のアロステリックモジュレーターで、DNAにコードされている小分子のライブラリーから最近単離された。βアドレナリン受容体のオルソステリックアンタゴニストはβ遮断薬と呼ばれ、世界で最も多く処方されている薬剤の1つだが、Cmpd-15は初めて見つかったアロステリックβ遮断薬である。Cmpd-15はアゴニストとは負の協調性を示し、インバースアゴニストとは正の協調性を示す。本論文では、このモジュレーターのポリエチレングリコール・カルボン酸誘導体(Cmpd-15PA)に結合したβ2ARの構造を報告する。Cmpd-15PAは、膜貫通セグメント1、2、6、7の細胞質側末端と細胞内ループ1およびヘリックス8が主体となって形成されているポケットに結合する。この構造を不活性状態、活性状態のβ2ARの構造と比較することにより、Cmpd-15がアゴニストの結合親和性とシグナル伝達を修飾する機序が明らかになった。

