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大気科学:ヤンガードライアス期からプレボレアル期の急激な温暖化事象における地質学的なメタンの最小放出量

Nature 548, 7668 doi: 10.1038/nature23316

メタン(CH4)は強力な温室効果ガスであり、全球の大気化学に重要な役割を担っている。地質学的な自然放出(海底や陸地の湧出域や泥火山からの化石メタンの自然放出)は、全球のメタン源に年間約52テラグラム寄与しており、総放出量の約10%になると考えられているが、こうした地質学的な放出量を絞り込むボトムアップ式の方法(放出量の測定)やトップダウン式の方法(大気中のモル分率と同位体の測定)はいずれも大きな不確かさを伴っている。本論文では、氷床コアの測定結果を用いて、過去の大気に含まれていた放射性炭素を含むメタン(14CH4)の絶対量を定量化し、約1万1600年前のヤンガードライアス期とプレボレアル期の間に起こった急激な温暖化事象全体の平均をとると、地質学的なメタン放出量は年間15.4テラグラムより少ないことを示す(信頼水準95%)。過去の地質学的なメタン放出量が現在よりも少なくないと仮定すると、今回の結果は、現在のメタンの地質学的な自然放出量の現在の見積もり(年間約52テラグラム)は過剰であり、ひいては、人為的な化石メタン排出量の現在の見積もりは少な過ぎることを示している。さらに、今回の結果は、ヤンガードライアス期からプレボレアル期の遷移期に湿地などの供給源からこの時期に放出されたメタンによって大気中のメタンのモル分率が急速に約50%増えたという以前の結果を改善し、裏付けている。すなわち、今回の知見によって、古い炭素リザーバー(海洋メタンハイドレート、永久凍土層、氷の下に閉じ込められたメタン)の寄与は19%以下に絞り込まれる(信頼水準95%)。最近の退氷期とヤンガードライアス期からプレボレアル期の温暖化の特徴が現在の人為的温暖化と同程度である限り、将来古い炭素源から大気へメタンが大量に放出される可能性は小さいことを、今回の測定結果は示唆している。

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