ナノ科学:アナログ演算のためのNbO2モットメモリスターのカオスダイナミクス
Nature 548, 7667 doi: 10.1038/nature23307
現在、機械学習システムには単純化されたニューロンモデルが用いられている。こうしたモデルでは、時空間的協調ダイナミクスを示す生物システムに見られる豊富な非線形現象を欠く。ニューロンはカオスの縁と呼ばれる領域で機能するという証拠があり、このことが脳における複雑さ、学習効率、適応性、アナログ(非ブール)演算の要となっている可能性がある。ニューラルネットワークをカオスの縁で動作させた場合に、計算の複雑さが増したことがあり、組み合わせ最適化問題や大域的最適化問題を解くために、カオス素子のネットワークが提案されている。従って、神経系に着想を得た回路に組み込むことのできる制御可能なカオス挙動の発生源は、将来の計算システムに不可欠な要素となる可能性がある。そうしたカオス素子は、既知のカオス方程式をシミュレートする精巧なトランジスター回路を用いてシミュレートされてきたが、単一のスケーラブルな電子デバイスによるカオスダイナミクスは実験的には実現されていない。今回我々は、それぞれの直径が100 nm未満の二酸化ニオブ(NbO2)モットメモリスターが、電流に制御される非線形輸送駆動の負性微分抵抗と、温度に制御されるモット転移駆動の負性微分抵抗の両方を示すことを報告する。モット物質は、電子スイッチとして働く温度依存性の金属–絶縁体転移を示し、デバイスに履歴依存性の抵抗を導入する。我々は、こうしたメモリスターを緩和振動子に組み込み、調節可能な範囲の周期的自己振動やカオス的自己振動を観察した。我々は、ナノスケールで熱ゆらぎと結合した非線形電流輸送がカオス的振動を生じさせることを示す。こうしたメモリスターは、大域的同期を防ぐ疑似ランダム信号を導入することで、神経系に着想を得た特定の種類の演算に有用な可能性があり、制約付き探索時に大域的最小点を見いだすのにも役立つ可能性がある。我々は、特に、そうしたメモリスターをホップフィールド・ネットワークのハードウエアに組み込むことで、計算困難な問題の解に収束する効率と正確さを大幅に向上できることを実証する。

