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神経変性:アルツハイマー病由来のタウ繊維の低温電子顕微鏡構造
Nature 547, 7662 doi: 10.1038/nature23002
アルツハイマー病は最もよく見られる神経変性疾患であり、発症機序に基づく治療法が存在しない。この疾患の特徴は、大脳皮質に大量に生じる神経原繊維変化による損傷と神経突起斑である。神経原繊維変化病変部位はらせん状タウ繊維の対と直線状タウ繊維の対からなるが、他の神経変性疾患を特徴付けるのはこれとは異なる形態のタウ繊維である。タウ繊維の高分解能構造は得られていない。今回我々は、アルツハイマー病患者の脳に由来する、らせん状繊維の対および直線状繊維の対の3.4~3.5 Å分解能の低温電子顕微鏡マップとそれに対応する原子モデルを示す。繊維の中核部は、タウタンパク質の306~378番目の残基からなる同一の2つのプロトフィラメントから形成されている。これらのプロトフィラメントは、クロスβ構造/βヘリックス構造が組み合わさった形をとっていて、タウ凝集のシードの形を規定している。対となったらせん状および直線状の繊維は、プロトフィラメント同士のパッキングの状態がさまざまで、これらが微細構造レベルでの多形体であることを示している。今回の知見は、低温電子顕微鏡を使えば、患者由来材料からのアミロイド繊維の原子レベルでの特徴解析が可能であることを実証しており、多様な神経変性疾患の研究に道を開くものだ。

