分子生物学:相分離がヘテロクロマチン領域の形成の原動力となる
Nature 547, 7662 doi: 10.1038/nature22989
構成的ヘテロクロマチンは真核生物ゲノムの重要な構成要素で、核の構造、DNA修復とゲノムの安定性、トランスポゾンや遺伝子発現のサイレンシングに必須の役割を担っている。ヘテロクロマチンには反復配列が非常に多く含まれ、エピジェネティックな目印となるのがヒストンH3のリシン9のメチル化と、結合相手であるHP1(heterochromatin protein 1)の誘引である。ヘテロクロマチンによるサイレンシングについては、これらの因子や関連する因子がクロマチンを凝縮させ、その結果、RNAポリメラーゼのような調節タンパク質がDNAから立体的に排除されるという見方が一般的である。しかしクロマチン凝縮だけでは、核内で複数の染色体に、膜のない別々のヘテロクロマチン領域が形成されること、領域内でタンパク質が素早く拡散することなど、ヘテロクロマチンの動的な性質は説明できない。本論文では、これに代わる仮説、すなわち、ヘテロクロマチン領域の形成に関わっているのは、核内、細胞質内、細胞外で膜に囲まれていないさまざまな区画を生じさせる、相分離という現象であるとする仮説の裏付けとなるデータについて報告する。ショウジョウバエ(Drosophila)のHP1aタンパク質がin vitroで液–液相分離を起こすことと、ショウジョウバエ初期胚では、ヘテロクロマチン領域形成の最初の段階で、HP1aが核となって液体の性質を示す点が生じることが明らかになった。さらに、ショウジョウバエ細胞でも哺乳類細胞でもヘテロクロマチン領域が、弱い疎水性相互作用の破壊に対する感受性など、液相分離に特徴的な動態や、拡散の減少、協調運動の増加、領域の境界での不活性プローブの排除を示すことが分かった。これらから、ヘテロクロマチン領域は相分離によって形成され、これが発達して液体と安定な区画を含む構造へと落ち着くと考えられる。ヘテロクロマチンの独特な挙動や、核の重要な機能をクロマチンの領域が一般にどのように調節しているかを理解するには、相分離系に関連して生じる生物物理学的特性が極めて重要だと我々は考える。

