構造生物学:メカノトランスダクションチャネルNOMPCの低温電子顕微鏡構造
Nature 547, 7661 doi: 10.1038/nature22981
自己受容や触覚、平衡感覚、加速度感知、聴覚や痛覚のような感覚での機械的刺激伝達は、特化した感覚細胞で機械的刺激を電気シグナルに変換するメカノトランスダクションチャネルに依存している。力がメカノトランスダクションチャネルを開閉する仕組みはこの分野における中核的な問題であって、これに対する主なモデルは2つ存在する。1つは膜張力モデルで、細菌のMscLチャネルや真核生物のカリウムチャネルのいくつかで見られるように、膜に力を加えると膜張力に変化が生じて、これだけでチャネルの開閉が行えるというものである。もう1つはテザー(つなぎ紐)モデルで、力はテザーを介して伝達され、チャネルが開閉されると考える。TRP(transient receptor potential)チャネルであるNOMPCは、線虫の一種Caenorhabditis elegansやショウジョウバエ(Drosophila)、ゼブラフィッシュなどの多様な生物種で、運動や触覚、音感覚のようなメカノセンシング(機械的刺激感知)に関連した行動に関して重要である。NOMPCは、TRPNサブファミリーの最初のメンバーで、そのアンキリンリピートドメインは細胞骨格の微小管へ繋留されており、それによってチャネルが開閉すると考えられている。従って、NOMPC研究の最終目標の1つは、力によって誘起されるチャネル開閉の基盤機構の解明であり、これが明らかになればテザーモデルの枠組みとなるだろう。NOMPCはメカノトランスダクションチャネルに当てはまる全ての基準を満たしており、TRPチャネルのメンバーでは最大数となる29個のアンキリンリピートを持つ。重要な問題は、長いアンキリンリピートドメインがどのように組織化されて、チャネル開閉を誘起できるテザーとなっているかである。今回我々は、単粒子低温電子顕微鏡法により決定されたショウジョウバエNOMPCのde novo原子モデルを示す。構造解析から、NOMPCのアンキリンリピートドメインはらせんばねに似ていることが示され、その役割は細胞骨格の機械的変位をチャネル開口に結び付けることだと考えられた。NOMPCのこの構造は、機械的な力を細胞内で電気的シグナルへと変換する際の基盤を明確に示している

