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遺伝学:KRABジンクフィンガータンパク質は遺伝子調節ネットワークの進化に寄与する

Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21683

ヒトゲノムには約350のKZFP(Krüppel-associated box (KRAB) domain-containing zinc-finger protein)がコードされており、KZFPは、初期の四肢類までさかのぼる、急速に進化してきた遺伝子ファミリーの産物である。ほとんどのKZFPの機能は分かっていないが、少数については、転写調節因子TRIM28や、ヒストンH3 Lys9のトリメチル化(H3K9me3)依存的なヘテロクロマチン形成やDNAメチル化の関連メディエーターを動員することで、胚性幹(ES)細胞において転位因子を抑制することが示されている。ヒトあるいはマウスのES細胞においてTRIM28を除去すると、広範な転位因子の発現上昇が引き起こされ、また、少数の個別事例に基づく最近のデータからは、宿主の配列と転位因子の間の軍拡競走がKZFP遺伝子選択の重要なドライバーであることが示されている。今回我々は、この現象の全体像を得るために、系統発生学的研究とゲノム研究を組み合わせて、脊椎動物におけるKZFP遺伝子の進化的な出現を調べ、またヒトゲノムにおけるKZFPの標的を突き止めた。第一に、このファミリーのルーツがシーラカンスと四肢類の共通祖先に割り当て直されたが、これは予想もしないことだった。第二に、KZFPの大部分が転位因子に結合し、進行中の共進化の例であることが確認されたが、KZFPの標的となる転位因子の大半は転位能を全て喪失していることが分かった。第三に、ヒトのKZFPと他の転写モジュレーターの間の相互作用を調べることによって、KZFPは転位因子のような遺伝的侵入者との軍拡競走が終わったずっと後に、進化的に保存された転位因子の断片を調節性制御基盤として利用している証拠が得られた。以上をまとめると我々の結果は、KZFPは転位因子と提携し、主に生物種特異的なエピジェネティック調節階層を構築していることを示している。

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