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分子生物学:RNA m6Aメチル化は紫外線によるDNA損傷応答を調節する

Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21671

細胞の増殖や生存には遺伝情報の正確な維持と伝搬が必要であるが、これは細胞内や外部環境に普遍的に存在するDNA損傷源の脅威にさらされている。DNA損傷応答と呼ばれるDNA修復系は、損傷を受けたDNAを検出して修復し、その修復が完了するまで細胞分裂が起こらないようにしている。今回我々は、紫外線照射に応答して、DNA損傷部位で、RNAのアデノシンの6位のメチル化(m6A)が迅速(2分以内)かつ一過性に誘導されることを報告する。この修飾は、多数のポリ(A)+転写産物に起こり、メチルトランスフェラーゼMETTL3(methyltransferase-like 3)とデメチラーゼFTO(fat mass and obesity-associated protein)によって調節される。METTL3の触媒活性がないと、細胞は紫外線により誘発されるシクロブタンピリミジン付加の修復遅延や、紫外線への感受性上昇を示したことから、紫外線に応答したDNA損傷応答ではm6Aが重要であることが明らかになった。この紫外線応答には多数のDNAポリメラーゼが関与しているが、損傷部位がヌクレオチド除去修復経路によって除去された後にDNAを再合成するものもあれば、損傷乗り越え複製に関与して、S期に損傷部位を乗り越えて複製できるものもある。DNAポリメラーゼκ(Pol κ)は、ヌクレオチド除去修復と損傷乗り越え複製の両方に関与することが示されているが、紫外線誘発性DNA損傷部位に迅速に局在化するためにはMETTL3の触媒活性が必要であった。重要なことに、Pol κを過剰発現すると、METTL3喪失に関連するシクロブタンピリミジン除去異常が質的に抑制された。このように我々は、紫外線誘発性DNA損傷応答におけるRNAのm6A修飾の新しい機能を明らかにしており、今回の結果をまとめると、m6A RNAが損傷部位にPol κを選択的に迅速に動員するための標識として機能して、修復や細胞の生存を促進しているとするモデルが裏付けられた。

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