ウイルス学:早期の抗体療法によりSHIVに対して長期間持続する免疫を誘導できる
Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21435
HIV-1に対する非常に強力な広範囲中和抗体(bNAb)は、ヒト化マウス、マカクザル、ヒトでのレンチウイルス感染の予防や治療に使われている。免疫療法の実験で、慢性感染動物にbNAbを投与すると、一過性にウイルスの複製が抑制されるが、これは常に投与前のレベルに戻り、結果として臨床的な疾患へと進行する。今回我々は、SHIV(simian/human immunodeficiency virus)のマカクザルモデルでbNAbの早期投与を行うと、それに付随して持続性ウイルス血症が非常に低いレベルに保たれ、T細胞性免疫の確立と、その結果としての長期感染制御につながることを示す。SHIVAD8-EOを経粘膜あるいは静脈内投与によりチャレンジ感染させたマカクザルに、2種類の強力なbNAb(3BNC117と10-1074)の受動移入を2週間かけて1クール行った。ウイルス血症は、bNAbのin vivoでの半減期に依存して56~177日間の範囲で検出されなかった。さらに、治療を受けた13頭のマカクザルにおいて、血漿ウイルス量がその後6頭のコントローラーマカクザルで検出不能なレベルに低下した。それに加えてさらに4頭のマカクザルでは、CD4抗原(CD4+)を持つT細胞数が維持され、2年以上ウイルス血症は非常に低いレベルのままであった。複製能を持つウイルスが存在する細胞の割合は、6頭のコントローラーマカクザルでは循環CD4+ T細胞106個当たり1個未満であった。コントローラーマカクザルへT細胞を枯渇させる抗CD8βモノクローナル抗体を注入すると、CD8+ T細胞のレベルの特異的な低下と、血漿ウイルス血症の迅速な再出現につながった。対照的に、感染後3日目に抗レトロウイルス併用療法を開始して、15週間治療を行ったマカクザルは、治療を中断すると、血漿ウイルス血症のリバウンドが持続した。我々の結果は、急性SHIV感染の際の受動免疫療法は、持続的にウイルスの複製を抑制する能力を持つ強力なCD8+ T細胞性免疫の出現を促進するという点で併用抗レトロウイルス療法とは異なっていることを示している。

