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量子物理学:古典限界を超えるスピン角度とスピン振幅の同時追跡
Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21434
スピン歳差運動の測定は、物理学、地球物理学、化学、ナノテクノロジー、神経科学における極限センシングの中核をなしており、磁気共鳴分光法の基礎となっている。スピン角度演算子は存在しないため、どのようなスピン歳差運動の測定も必然的に間接的であり、例えば、その時々のスピン射影演算子から推測できる可能性がある。そうした射影演算子は交換しないため、量子測定の反作用、すなわち測定に起因する量子状態のランダムな変化が、スピン測定記録に必然的に入り込み、誤差を生じて感度を制限する。今回我々は、量子測定の反作用のほとんど全てを測定されていないスピン成分に向けることによって、スピン射影演算子のこうした擾乱を、N個のスピンの古典限界であるN1/2以下にできることを示す。その結果、平面スクイーズド状態が生じ、スピンは非ハイゼンベルクの不確定性関係に従うため、スピン角度とスピン振幅の正確な情報を同時に得ることが可能になる。我々は、歳差運動をしている磁気スピン集団にダイナミックレンジの広い光量子非破壊測定を適用し、標準量子限界より2.9 dB低い定常状態角度感度と、ポアソン分散より7.0 dB低い振幅感度を同時に満たす、スピン追跡を実証した。この標準量子限界とポアソン分散は、個々の粒子で実現できる最高感度を示している。今回の方法は、非可換オブザーバブルにおけるこうした限界を上回っており、最先端のセンシングや分光法の感度を数桁向上できる。

