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有機化学:触媒的二官能性テンプレートによって誘導される部位選択的遠隔C–H活性化
Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21418
化学合成では、炭素–水素(C–H)結合の活性化によって、事前官能基化を必要とせずに、C–H結合が炭素–炭素結合や炭素–ヘテロ原子結合に直接変換される。従って、C–H活性化によって、合成に関わるステップの数を大幅に減らすことができる。「配向」基(通常は官能基)を用いることによって、基質中の特定の単一C–H結合を活性化して、所望の生成物を選択的に得ることができる。そうしたC–H活性化反応の適用可能性は、配向基から当のC–H結合までの距離や基質の形状によって著しく抑制されるが、こうした制約を克服するためにいくつかの手法が開発されてきた。そうした手法の1つでは、基質の官能基とC–H結合の距離的関係や幾何学的な関係の知識を活用し、共有結合で取り付けたU字形テンプレートを用いることによってメタ選択的C–H活性化が実現された。しかし、このテンプレートを取り付ける適切な官能基が存在しない場合、当量のテンプレートを導入することができなかった。今回我々は、共有結合の代わりに可逆的配位を介して複素環基質と結合する触媒的二官能基ニトリルテンプレートの設計について報告する。このテンプレートに配位した2つの金属中心は、異なる役割を担っており、一方の金属中心は触媒近傍に基質を可逆的に固定し、もう一方の金属中心は遠隔C–H結合を開裂させる。我々は、この戦略を用いて、テンプレートとの共有結合に必要な官能基を持たない複素環基質の部位選択的遠隔C–Hオレフィン化を実証している。

