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分子生物学:ゲノム構造マッピングで捉えられた多数のエンハンサーの複雑な接触

Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21411

核内でのゲノムの編成状態や遺伝子とその調節因子の相互作用は転写制御の重要な要素であり、これらが破壊されると疾患につながることがある。今回我々は、クロマチンの接触などのクロマチンの三次元でのトポロジー的特性を、核の多数の薄切片集合体から得たDNAの塩基配列解読に基づいて調べるゲノム規模の方法、ゲノム構造マッピング(genome architecture mapping;GAM)について報告する。我々はGAMをマウスの胚性幹細胞に適用し、活性な遺伝子とエンハンサーの間には、ゲノム上で非常に長い距離をまたいで特異的な相互作用が著しく増えていることを、SLICE(stastical inference of co-segregation;共分離の確率の統計的推測)と命名した数学的モデルを用いることにより明らかにした。GAMにより、ゲノム全体、特に盛んに転写されている領域やスーパーエンハンサーを含む領域間で三方向の接触が多数見られることが明らかになり、ゲノムの編成状態について、現行の方法の技術的限界によってこれまで到達できなかったレベルにまで踏み込んだ考察が得られた。また、哺乳類の核内でのゲノムの構造化に遺伝子発現特異的な接触が役割を果たしていることもGAMによって明らかになった。

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