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地球科学:(Al,Fe)を含むブリッジマナイトの弾性データから得られたFe3+に富むパイロライト的下部マントルの証拠
Nature 543, 7646 doi: 10.1038/nature21390
地球の下部マントルの化学的組成は、地震学的観測と鉱物物理学的弾性率測定を組み合わせることで絞り込める。しかし、地球で最も豊富な鉱物である(Mg,Fe,Al)(Si,Al,Fe)O3ブリッジマナイト(ケイ酸塩ペロフスカイトとも呼ばれる)の実験データが不足しているため、最終的な結果は得られていない。本論文では、高圧ブリルアン分光法とX線回折を用いて測定した、(Al,Fe)を含むブリッジマナイト(Mg0.9Fe0.1Si0.9Al0.1)O3 の単結晶弾性率データを報告する。今回の測定結果は、(Al,Fe)を含むブリッジマナイトの弾性的挙動が、MgSiO3端成分の挙動と著しく異なることを示している。我々は、このデータを用い、パイロライト的なマントル組成を仮定して、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの間の鉄分配の深さに依存する変化を説明する、下部マントル最上部の地震波速度をモデル化した。その結果、この鉱物物理学的予測と地震波による予備的な標準地球モデル(PREM)が少なくとも1200 kmの深さまでよく一致することが分かった。これは、上部マントルと下部マントル浅部の化学的均一性を示している。下部マントル浅部のブリッジマナイトの約2という高いFe3+/Fe2+比と地震波データを一致させる必要があるため、化学的に同じマントルには金属鉄が存在することが示唆される。今回計算した地震波速度は、深さが1200 kmより深くなるにつれて、下部マントルの地震波速度と次第に一致しなくなるため、ブリッジマナイトの陽イオン秩序が変化しているか、下部マントルの第二鉄含有量が減少していることが示される。

