Letter

分子生物学:低酸素応答の終結は秩序立った構造を持たないタンパク質スイッチによって非常な高感度で行われる

Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21705

低酸素状態に対する細胞応答は細胞の生存に不可欠であり、細胞が低酸素ストレスから回復して、酸素レベルの不均一性や変動に適応できるように微調整されている。低酸素応答は転写因子HIF-1のαサブユニット(HIF-1α)によって仲介される。このサブユニットは、C末端の秩序立った構造を本来的に持たないトランス活性化ドメインを介して、基本転写コアクチベーターであるCBPとp300のTAZ1(別名CH1)ドメインに結合し、重要な適応遺伝子の転写を制御する。このような遺伝子の1つがコードするCITED2は負のフィードバック調節因子で、自身の秩序立った構造を持たないトランス活性化ドメインを介して、TAZ1への結合をHIF-1と競合することにより、HIF-1の転写活性を低下させる。CITED2が、共通の細胞標的TAZ1に強く結合しているHIF-1αに置き換わる機構は、分子レベルではほとんど明らかになっていない。HIF-1αとCITED2のトランス活性化ドメインは、負のフィードバック調節に不可欠な保存されたLP(Q/E)L配列を間に挟むヘリックスモチーフを介してTAZ1と結合する。今回我々は、ヒトCITED2がTAZ1およびHIF-1αと一過的に三者複合体を形成し、共通の結合部位に対してLPELモチーフを介して競合することにより、HIF-1αの解離速度を高めるようなコンホメーション変化をTAZ1に誘導して、HIF-1αと置き換わることを明らかにする。CITED2はHIF-1αの解離をアロステリックに促進することで、応答性の非常に高い負のフィードバック回路を活性化し、中程度のCITED2濃度であっても低酸素応答を迅速かつ効率よく減衰させる。この非常に感度の高い調節スイッチは、秩序立った構造を本来的に持たないこれらのタンパク質の独特な可塑性と結合特性に完全に依存しており、細胞が環境シグナルに迅速に応答するために使う共通戦略を例証していると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度