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細胞生物学:誤って折りたたまれたタンパク質のミトコンドリア内への移入を介して保たれる細胞質のタンパク質恒常性

Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21695

タンパク質恒常性の喪失は、タンパク質凝集体の蓄積やミトコンドリアの機能不全を特徴とする老化や神経変性の原因である。多くの神経変性疾患関連タンパク質はミトコンドリア内に見られるが、ミトコンドリアの機能不全とタンパク質の凝集がどのように関係し得るかは明らかになっていない。分裂酵母細胞では、ストレス下あるいは老化によって形成されたタンパク質凝集体は、ミトコンドリアへの繋留などにより母細胞に優先的に保持されるが、脱凝集酵素(disaggregase)Hsp104は凝集体の解離を促すことで、誤って折りたたまれたタンパク質の再折りたたみ、あるいは分解を可能にする。今回我々は、酵母では、凝集しやすい細胞質タンパク質が分解のためにミトコンドリアに移入されることを示す。熱ショック下で形成されるタンパク質凝集体は、細胞質とミトコンドリアの両方のタンパク質を含んでいて、ミトコンドリア移入複合体と相互作用する。凝集しやすい多くのタンパク質が、熱ショック後にミトコンドリアの膜間腔およびマトリックスに入るが、ストレスがなくても入るタンパク質もある。細胞質の凝集体の適時の分解にはミトコンドリア移入装置とプロテアーゼが必要である。プロテアソーム活性を阻害せずにミトコンドリアへの移入を阻害すると、凝集したタンパク質の分解が顕著に遅延する。細胞質のHsp70の異常により、誤って折りたたまれたタンパク質のミトコンドリアへの移入が増え、ミトコンドリアのストレスが上昇した。我々は、このミトコンドリアによるタンパク質恒常性機構をMAGIC(mitochondria as guardian in cytosol)と名付け、この機構がヒト細胞においても存在すると考えられる証拠を示す。

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