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宇宙物理学:100億年前の銀河形成ピーク時に銀河円盤はバリオンが極めて支配的だった

Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21685

冷たい暗黒物質の宇宙論において、銀河のバリオン成分である恒星やガスは、非バリオン的で非相対論的な暗黒物質と混在してその中に埋没している。暗黒物質は、銀河やその暗黒物質のハローの質量全体の大部分を占めていると考えられている。近傍(低赤方偏移)の宇宙では、銀河円盤内の暗黒物質の質量は円盤半径とともに増加してかなりの量になり、さらに星形成銀河の円盤外側のバリオン的な領域で支配的になる。この結果、円盤内の目に見える物質の回転速度は一定になっているか、円盤半径とともに増加しており、これが暗黒物質モデルの特徴となっている。回転平衡にあるこうした速度から推測される力学的質量と、補助的なデータから推測される100億年前の銀河形成がピークだった時代における星や低温ガスの質量の合計を比較すると、円盤内側の星形成領域ではバリオンの割合が大きいことが示唆される。示唆されたこのバリオンの割合は、近傍宇宙より大きい可能性はあるものの、選択された星の初期質量関数とガス質量の較正に起因する系統的不確実性があるため、暗黒物質の質量に関するそうした比較の結論は出ていない。本論文では、6つの大質量星形成銀河の円盤外側の回転曲線(円盤半径の関数としての回転速度を示したもの)について報告し、回転速度が一定ではなく、半径とともに減少していることを明らかにする。我々は、2つの主な要因が組み合わさってこの傾向が生じていると考える。すなわち、(1)高赤方偏移の大質量銀河の大部分ではバリオンが極めて支配的であり、暗黒物質の役割は近傍宇宙より小さかったこと、(2)高赤方偏移の円盤では速度分散が大きいため大きな圧力項が生じ、半径の増加につれて回転速度が減少することである。これらの要因の影響はいずれも、赤方偏移とともに大きくなっているように思われる。定性的には、初期(高赤方偏移)宇宙では、ガスの割合が大きく暗黒物質がそれほど集まっていなかったときに、暗黒物質ハローの中心部にバリオンが効率的に濃集したことが、観測から示唆される。

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