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幹細胞:代謝において異なる性質を持つ腸陰窩細胞間の相互作用が幹細胞機能を支える

Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21673

小腸上皮は4~5日ごとに自己再生する。この再生を持続させる腸幹細胞[Lgr5+ CBC(crypt base columnar cell)]は、自己再生を維持しつつ腸陰窩の底部で最終分化したパネート細胞の間に存在している。幹細胞機能や陰窩の恒常性を維持するために必要なシグナル伝達はよく研究されているが、代謝が上皮の恒常性にどのように関与しているかはほとんど分かっていない。今回我々は、マウス小腸から新たに単離したLgr5+ CBCとパネート細胞が異なる代謝プログラムを示すことを明らかにする。パネート細胞と比較して、Lgr5+ CBCは高いミトコンドリア活性を示す。Lgr5+ CBCのミトコンドリア活性、あるいはパネート細胞の解糖を阻害すると、オルガノイド形成の低下によって示されるように、幹細胞機能に強力な影響が及ぶ。さらにパネート細胞は、乳酸を供給してLgr5+ CBCにおけるミトコンドリアの酸化的リン酸化の上昇を持続させることにより、幹細胞機能を支えている。機構としては、酸化的リン酸化が、ミトコンドリアの活性酸素種シグナル伝達によりp38 MAPKの活性化を促進して、成熟した陰窩の表現型が確立されることが分かった。以上より、Lgr5+ CBCとパネート細胞の代謝における性質の違いが最適な幹細胞機能を支えることにおいて非常に重要な役割を担っていることが明らかになり、ミトコンドリアおよび活性酸素種のシグナル伝達が細胞分化の推進力であることが分かった。

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