細胞生物学:KICSTORはGATOR1をリソソームへと誘導し、栄養素によるmTORC1の調節に必要とされる
Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21423
mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)は、さまざまな環境シグナルに応答して細胞の増殖を調節する主要な因子であり、がんやてんかんなど、ヒトの多くの病気ではこの調節が働かなくなっている。アミノ酸はこの系に対する主要な入力であり、Rag GTPアーゼを介して作用して、mTORC1のリソソーム表面(mTORC1の活性化部位)への移動を促進する。アミノ酸に応答してRag GTPアーゼを調節するタンパク質複合体は複数あり、その中にはRAGAに対するGTPアーゼ活性化タンパク質であるGATOR1や、分子機能は未解明の正の調節因子GATOR2が含まれる。今回我々は、KPTN、ITFG2、C12orf66、SZT2という4つのタンパク質で構成されるタンパク質複合体(KICSTOR)を発見し、この複合体は、ヒト培養細胞でアミノ酸やグルコースの欠乏によってmTORC1を阻害するのに必要であることを明らかにする。SZT2を欠損したマウスでは、脳のニューロンを含むいくつかの組織でmTORC1シグナル伝達が亢進する。KICSTORはリソソームに局在し、GATOR1に結合してリソソーム表面へと誘導するが、GATOR2は誘導せず、また、GATOR1がその基質のRag GTPアーゼやGATOR2と相互作用するためには、KICSTORが必要である。さらに、mTORC1シグナル伝達の過剰活性化につながる変異が関係する神経疾患では、KICSTORの複数の構成因子に変異が見られた。このように、KICSTORはmTORC1シグナル伝達に対するリソソーム関連の負の調節因子であり、GATOR1と同様に、ヒトの病気で変異が見られる。

