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がん:クラスIIa HDACの阻害は抗腫瘍マクロファージを介して乳がんを縮小させ転移を減らす
Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21409
免疫腫瘍学では適応免疫系の操作に重点が置かれてきたが、自然免疫系と適応免疫系の両方を利用できれば、腫瘍を縮小・除去するための優れた方法になり得る。腫瘍関連マクロファージは、結果として腫瘍促進効果を示すことが多いが、それらが腫瘍に埋め込まれていることや治療応用の可能性を考えると、腫瘍関連マクロファージを抗腫瘍因子に変える方法を探す動機になる。腫瘍関連マクロファージを枯渇させたり(抗CSF-1抗体やCSF-1R阻害による)、刺激したりする(アゴニストの抗CD40抗体や、抑制性抗CD47抗体による)戦略は、ある程度成功している。我々は、マクロファージの表現型を薬理学的に調節することで、抗腫瘍効果を生み出すことができるのではないかと考えた。我々は以前に、画期的新薬の選択的クラスIIaヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤であるTMP195が、in vitroでヒト単球のコロニー刺激因子CSF-1とCSF-2への応答に影響を与えることを報告した。今回我々は、マクロファージ依存的な乳がん自発性マウスモデルを用い、in vivoでのTMP195の投与が、マクロファージの表現型を変えることで腫瘍微小環境を変化させ、腫瘍量と肺転移を減少させることを示す。TMP195は腫瘍内で、食作用の強い免疫賦活性マクロファージの誘引と分化を誘導する。さらにこのモデルで、TMP195と、化学療法またはT細胞チェックポイント阻害を併用することで、腫瘍減少の持続性が著しく亢進した。これらのデータは、クラスIIa HDAC阻害剤が、マクロファージの抗腫瘍能力を利用して、がん治療の効果を高める方法となることを示している。

