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神経生理学:脊椎動物の祖先的電気受容の分子基盤
Nature 543, 7645 doi: 10.1038/nature21401
サメやエイなどの板鰓類魚類は、ロレンチニ瓶と呼ばれる特殊な電気感覚器官を使って、周囲の電場のごく微細な変化を感知する。ロレンチニ瓶内部の電気感覚細胞は、周囲の電位勾配のわずかな変化を識別して応答できるが、その仕組みはまだ知られていない。今回我々は、ガンギエイの一種Leucoraja erinaceaの電気感覚細胞では電位依存性カルシウムチャネルCaV1.3と大コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネルが選択的に発現されており、これらが機能的に共役して、特定の弱い電気信号の感知に重要な電気感覚細胞の膜電位振動を生じていることを明らかにする。この2種類のチャネルは共に、類似の電気感覚機能を支える哺乳類オルソログと比べて独特な特性を備えており、CaV1.3の構造的適応が活性化の閾値電位を低くしている一方、BKの変化は特異的に調整された電位振動を可能にしている。これらの知見から、電気受容の分子基盤が明らかになり、イオンチャネル構造において個別の進化的変化が感覚適応を促進する仕組みが示された。

