Letter
気候科学:海洋強制によって起こり地殻均衡によって調節されるハインリッヒイベント
Nature 542, 7641 doi: 10.1038/nature21069
最終氷期に、ローレンタイド氷床から多数の氷山がハドソン海峡を通して北大西洋へと間欠的に流出し、氷山によって運ばれた岩屑の特徴的な層が海洋堆積物に残った。厄介なことに、こうした大規模な流出事象(ハインリッヒイベント)は、ダンスガード・オシュガーサイクルと呼ばれる1000年スケールの気候振動の寒冷期に起こった。このことは、氷床はより寒冷な気候の間に拡大し、温暖な気候の間に縮小するという予想とは大きく異なっている。本論文では、氷床モデルを用いて、ハインリッヒイベントの規模とタイミングは、現代の終端が海洋にある氷河の後退を駆動しているのと同じ過程で説明できることを示す。我々のモデルでは、鉛直循環の変動に伴う海洋表層下の温暖化によって分離面に沿って水面下の融解が増大し、縁辺域の急速な後退と氷山の流出の増大が生じる。1000年の時間スケールでは、地殻均衡によって海底が隆起し、終端部が表層下の温暖化から隔離されて氷床の前進が再び可能となり、最も前進した位置で次のハインリッヒイベントが準備される。この機構は、観測されたハインリッヒイベントのタイミングと規模を説明するだけでなく、温暖化した海洋と接する氷床は、気温がほとんど上昇していなくても、壊滅的な崩壊に対して脆弱である可能性を示唆している。

