構造生物学:アルツハイマー病の臨床サブタイプから明らかになったアミロイドβ原繊維の構造の多様性
Nature 541, 7636 doi: 10.1038/nature20814
アルツハイマー病の病因の中核をなしているのは、アミロイドβペプチドの原繊維あるいは他の自己集合状態への凝集である。40アミノ酸残基からなるアミロイドβペプチド(Aβ40)および42アミノ酸残基からなるアミロイドβペプチド(Aβ42)によってin vitroで形成される原繊維は多形であり、原繊維の成長条件に依存した分子構造の多様性が見られる。最近の実験で、アミロイドβ原繊維の構造のin vivoでの多様性がアルツハイマー病の表現型の多様性と相関している可能性が示唆された。これは、異なるプリオン株が異なる臨床表現型や病理学的表現型に関連しているのと同様である。今回我々は、固体核磁気共鳴法(ssNMR)による測定を行い、アルツハイマー病の大脳皮質の抽出物を種結晶成長させて準備したAβ40原繊維およびAβ42原繊維について、構造の多様性とアルツハイマー病の表現型との間の相関を調べた。我々は、アルツハイマー病の2つの非典型的な臨床サブタイプである急速進行性型(r-AD)および後部皮質萎縮異型(PCA-AD)を、典型的な長期型(t-AD)と比較した。18人の患者から得た37の皮質組織試料のssNMRデータに基づいて、t-ADおよびPCA-ADの患者試料では単一のAβ40原繊維構造が最も豊富に見られるのに対し、r-AD試料のAβ40原繊維では他にも複数の構造が有意に多く存在することが分かった。Aβ42原繊維のデータからは、全ての患者カテゴリーに由来する大部分の試料で、構造の不均一性があり、多く見られる構造が少なくとも2つあることが示唆された。これらの結果は、Aβ40原繊維にはt-ADおよびPCA-ADに特異的かつ支配的な構造が存在することを実証しており、r-ADは他の複数の原繊維構造と関係する可能性があることを示唆するとともに、アルツハイマー病患者の脳組織ではAβ40凝集体とAβ42凝集体との間に質的な違いがあることを示している。

