がん:腎細胞がんを標的とするHIF-2アンタゴニスト
Nature 539, 7627 doi: 10.1038/nature19796
淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)の特徴は、フォン・ヒッペル・リンダウがん抑制遺伝子(VHL)の不活化である。ccRCCでは、同程度の頻度で変異が見られる遺伝子はこれ以外に存在せず、VHL変異は腫瘍内のあらゆる細胞で見られるtruncal mutationであって、VHLの不活化が支配的事象であると見なされている。VHLの喪失によりHIF-2転写因子が活性化され、またVHLを再構築したccRCC細胞では構成的なHIF-2活性により腫瘍発生が復活する。HIF-2は血管新生をはじめとして複数の経路に関わるが、チロシンキナーゼ阻害剤スニチニブなどの薬剤の主な標的は血管新生であり、HIF-2はアンドラッガブル、つまり創薬が困難と考えられてきた。今回我々は、腫瘍移植片/患者由来異種移植片をプラットフォームとして用い、構造に基づく設計法によって見つかった選択的HIF-2アンタゴニストであるPT2399の評価を行った。PT2399はヒトccRCC細胞でHIF-2(活性に必須のHIF-2α–HIF-1βヘテロ二量体)を解離させ、ヒトccRCC細胞株の56%(18例のうち10例)で腫瘍発生を抑制した。PT2399はスニチニブよりも活性が強く、スニチニブ投与下で進行する腫瘍にも活性を示し、忍容性がより高かった。VHLが変異しているccRCCの一部は、PT2399に予想外の抵抗性を示した。この抵抗性は、腫瘍でHIF-2が解離していて、マウスでHif-2が阻害されている証拠があっても(これはHIF-2の標的の1つで薬物動態マーカー候補である循環血中エリスロポエチンが抑制されていることから決定された)、生じる。我々はさらに、PT2399に感受性を示す腫瘍でHIF-2依存性遺伝子シグネチャーを明らかにした。抵抗性を示す腫瘍では、遺伝子発現にPT2399による影響がほとんど見られず、PT2399が特異的に働く薬剤であることがはっきりした。感受性の腫瘍では際立って特徴的な遺伝子発現シグネチャーが見られ、一般的にHIF-2αのレベルが高かった。長期的なPT2399投与は抵抗性の出現につながった。PT2399結合部位の抑制変異がHIF-2αで、第2の部位の抑制変異がHIF-1βで見つかり、これら2つの変異は共に、PT2399を投与してもHIF-2が二量体状態を保つように働いた。さらに、それまでにさまざまな前治療を受けていた患者(その腫瘍からはPT2399感受性の腫瘍移植片が生じた)に、PT2399との類似性が高いPT2385を投与すると、病態が11か月にわたってコントロールされた。これらにより、HIF-2がccRCCで治療標的になることが証明され、また一部のccRCCはHIF-2に依存しないことも明らかになり、バイオマーカーを指標にした臨床試験に向けた基盤が整った。

