エピジェネティクス:TETを介したDNAの脱メチル化はLefty–Nodalシグナル伝達を調節することにより原腸形成を制御する
Nature 538, 7626 doi: 10.1038/nature20095
哺乳類のゲノムは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)によるシトシンのメチル化などのエピジェネティック修飾を受ける。TET(Ten-eleven translocation)ファミリーのジオキシゲナーゼによる5-メチルシトシンの酸化は、脱メチル化につながり得る。シトシンのメチル化は、ゲノムインプリンティングやX染色体不活性化といったいくつもの過程で主要な役割を担っているが、マウス胚発生におけるシトシンのメチル化と脱メチル化の機能的重要性については、完全には分かっていない。本研究で我々は、3つのTet遺伝子を全て不活性化したマウスでは、中軸中胚葉の成熟異常や沿軸中胚葉の指定異常と関連した原始線条のパターン形成異常など、原腸形成における表現型を生じ、これらがNodalシグナル伝達の機能獲得型の胚で見られる表現型と類似していることを示す。Tet変異の遺伝的背景にNodalの変異対立遺伝子を1つ導入すると、パターン形成が部分的に回復したことから、Nodalシグナル伝達の過剰な活性化がTet変異体における原腸形成異常の原因となっていることが示唆された。Nodalシグナル伝達の増加はおそらく、Nodalシグナル伝達の阻害因子をコードするLefty1およびLefty2遺伝子の発現が減少したことによるものと考えられる。さらに、Lefty遺伝子の発現低下はDNAメチル化の上昇と関連しており、それはDnmt3aとDnmt3b遺伝子を破壊すると、Tet欠失胚でLefty–Nodalシグナル伝達と正常な形態形成の両方が大幅に回復することで分かる。加えて、ジオキシゲナーゼ活性を特異的に欠失したTetの点変異は、ヌル変異と同様の形態的および分子的異常を引き起こした。以上より、我々の結果は、TETを介した5-メチルシトシンの酸化が、DNMT3AとDNMT3Bによるメチル化とは反対に脱メチル化の促進によって、Lefty–Nodalシグナル伝達を調節していることを示している。これらの知見は、初期ボディープラン形成における主要なシグナル伝達経路の調節に非常に重要な、動的なDNAのメチル化と脱メチル化を特徴とする基礎的なエピジェネティック機構を明らかにしている。

