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発生生物学:染色体のコンホメーションから明らかになった発生中のヒト脳での調節関係

Nature 538, 7626 doi: 10.1038/nature19847

染色体内での物理的な三次元(3D)相互作用は、遺伝子発現を組織特異的な様式で動的に調節している。しかし、ヒト脳の発生の際の染色体の3D構造は分かっていないし、それが自閉症や統合失調症などの神経発達障害で調節に異常が生じる遺伝子ネットワークの調節にどのような役割を果たしているかも不明である。今回我々は、ヒトでの皮質発生の際のクロマチンの接触状況を示す高分解能3Dマップを作製し、ヒトの認知の進化や病気に関わる、これまで知られていなかった調節関係についての大規模なアノテーションを可能にした。我々の解析によって、ヒト系列で獲得されたエンハンサーと物理的に相互作用する遺伝子が数百個見つかった。その多くには純化選択が働いていて、ヒトの認知機能に関連している。クロマチン接触と統合失調症のゲノム規模関連研究(GWAS)で見つかった非コード性バリアントとを組み合わせることにより、統合失調症のリスク遺伝子と経路の候補が複数明らかになった。その中には、神経発生に関わる転写因子やコリン作動性シグナル伝達分子が含まれ、そのうちのいくつかは、別個に行った発現量的形質座位と遺伝子発現解析によっても裏付けられた。ヒト神経前駆細胞でのゲノム編集により、これらの遠位統合失調症GWAS座位の1つがFOXG1遺伝子の発現を調節していることが示唆され、これが統合失調症のリスク遺伝子である可能性が裏付けられた。今回の研究により、ヒトの脳の発生や認知の進化に非コード性調節要素が及ぼす影響を解明するための枠組みが得られ、精神神経疾患の基盤となる新しい機構が明らかになった。

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