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惑星科学:月の高エネルギー巨大衝突起源を裏付けるカリウム同位体の証拠
Nature 538, 7626 doi: 10.1038/nature19341
地球–月系の化学的特徴や同位体的特徴は他の惑星と比べて独特であるため、この系の起源をうまく説明できるモデルは全て、こうした化学的制約や同位体的制約を満たす必要がある。月は、地球や全太陽組成に比べてカリウムなどの揮発性元素がかなり枯渇しており、そのことは破局的な月形成巨大衝突事象の結果であると長らく考えられてきた。月のように揮発性元素の少ない天体では、揮発性物質が失われていく間にカリウムの重い同位体が濃集すると予想されていたが、そうした濃集はまだ見つかっていない。本論文では、地球、月、コンドライト隕石の新しい高精度カリウム同位体データを報告する。我々は、月の岩石が、地球やコンドライトよりも有意に( > 2σ)カリウムの重い同位体に富んでいる(約0.4‰)こと見いだした。地球やコンドライトと比べて月岩石にカリウムの重い同位体がより濃集していることは、10 barより高い環境圧力下で全ケイ酸塩地球の蒸気の凝集が不完全であった結果であるとすると、最もうまく説明できる。我々は、化学的損失とKの同位体分別を結び付けたこうした制約条件を使って、地球と月で同一の非質量依存同位体組成の説明に使われた2つの新しい力学モデルを比較した。我々のK同位体測定値は、月の起源に関して低エネルギー円盤平衡モデルとは一致せず、高エネルギーで角運動量の大きい巨大衝突モデルを裏付けている。さらに、高精度カリウム同位体データは、月形成事象時の物理条件を明らかにするための「古圧力計」としても使用できる。

