細胞生物学:エピシャペロームは腫瘍の生存を促進する統合されたシャペロームネットワークである
Nature 538, 7625 doi: 10.1038/nature19807
一過性の多タンパク質複合体は細胞機能の重要な促進因子である。その1つであるシャペローム(chaperome)は、シャペロン、コシャペロン、アダプター、折りたたみ酵素といった多数のタンパク質からなるファミリーで、その動的な複合体はタンパク質分解装置と共に細胞の恒常性を調節している。多くの研究で、シャペロームに属するタンパク質の個々の役割は調べられてきたが、それらのタンパク質が悪性腫瘍でどのように相互作用し、協同で機能するかという関係性についてはほとんど解明されていない。機能はおそらく自然に生じた腫瘍に見られる内因性の状況に高度に依存しているため、解析を容易にするためには細胞環境の破壊や改変を行う必要があるが、その方法が限られていることが主な要因となってシャペロームを調べることはこれまで難しかった。そのような制限が、シャペローム関連疾患の生物学的性質を解明したり、シャペロームを標的とするがん治療を開発したりする際のボトルネックとなってきた。今回我々は、腫瘍標本の大規模なセットでシャペローム複合体について調べた。用いた方法は腫瘍の内因性の自然状態を維持しており、我々はそれを利用して、がんのシャペロームの分子的な特性と組成、腫瘍でシャペロームネットワーク間のクロストークを駆動する分子、薬理学的阻害に感受性のある腫瘍でのシャペローム識別因子、シャペローム治療が有効な可能性がある腫瘍の特性について調べた。MYCによって促進される悪性形質転換などのストレス条件下では、シャペロームは生化学的に「再配線」されて、安定で生存を促進する高分子量複合体を形成することが分かった。シャペロンである熱ショックタンパク質90(HSP90)およびHSC70(heat shock cognate protein 70)は、これらの物理的かつ機能的に統合された複合体の核となる部位である。以上の結果から、これらの緊密に統合されたシャペローム単位、つまり「エピシャペローム(epichaperome)」は、組織の起源や遺伝的背景にかかわらず、細胞の生存を促進するネットワークとして機能し得ることが示された。エピシャペロームは、調べた全てのがんの半数以上に存在して、診断と密接に関係しており、薬剤介入の標的としての脆弱性を持つ可能性も示された。

