発生生物学:マウスの卵母細胞の広域なヒストンH3K4me3ドメインが、母性・胚性転移を調節する
Nature 537, 7621 doi: 10.1038/nature19360
新しい個体が生じるには母性・胚性転移(MZT)が不可欠だが、初期胚発生における遺伝子発現やDNAメチル化の解析が近年進歩しているにもかかわらず、MZTについてはほとんど解明されていない。ヒストン修飾の動的変化がMZTで重要な役割を果たしている可能性があるが、少数の細胞からヒストン修飾のプロファイリングを行うことが技術的に難しく、クロマチンの状態の直接的な測定の妨げとなっていた。最近の技術改良により、1反応当たり細胞500個に相当するクロマチンで測定が可能になっているものの、最初の段階に1万個の細胞が必要だったり、簡単には入手できない非常に特殊なマイクロ流体デバイスが必要だったりする。今回我々は、マイクロスケールのクロマチン免疫沈降とこれに続くゲノム塩基配列解読(μChIP–seq)法を開発し、これを利用してマウスの未成熟な減数第二分裂中期の卵母細胞と、2細胞胚および8細胞胚で、ゲノム全域にわたってヒストンH3のリシンメチル化(H3K4me3)とアセチル化(H3K27ac)のプロファイリングを行った。興味深いことに、卵母細胞ゲノムの約22%は広域なヒストンH3K4me3ドメインと関連しているが、このドメインはDNAメチル化とは逆相関している。このH3K4me3シグナルが、2細胞胚では転写開始部位領域に限定されるようになり、同時に、主要な接合子ゲノム活性化が始まる。正常な接合子ゲノム活性化にはリシンデメチラーゼKDM5A、KDM5BによるH3K4me3ドメインの積極的な除去が必要であり、それが初期胚発生に不可欠である。これらの知見から、マウス胚での発生プログラムの始まりについての手掛かりが得られ、広域なH3K4me3ドメインがMZTに果たす役割が明らかになった。

