がん:PGC1αを介した転写軸は黒色腫の転移を抑制する
Nature 537, 7620 doi: 10.1038/nature19347
黒色腫は急速に転移へと進行するため、よく見られる皮膚がんの中で最も致死性が高いタイプである。代謝の再プログラム化は腫瘍のプログレッションと密接に関連しているが、代謝調節回路が転移過程に及ぼす影響についてはほとんど分かっていない。PGC1αは転写コアクチベーターであり、ミトコンドリア生合成を促進し、酸化ストレスから防護し、黒色腫の代謝を再プログラム化して薬剤感受性や生存に影響を及ぼす。今回我々は、PGC1αは黒色腫の転移を抑制し、その作用はPGC1αの生体エネルギー機能とは異なる経路を介していることを示すデータを提示する。PGC1αの発現上昇は、ヒト黒色腫標本の垂直方向への増殖と逆相関する。PGC1αをサイレンシングすると、転移性の低い黒色腫の浸潤性が非常に高くなり、逆にPGC1αを復活させると転移が抑制された。黒色腫細胞集団内におけるPGC1αのレベルは著しく不均一であり、これにより備わっている転移能力の高低を推測できる。機構的には、PGC1αはID2の転写を直接上昇させ、次にそのID2が転写因子TCF4に結合してそれを不活性化させる。TCF4の不活性化は、浸潤と転移に影響することが知られているインテグリンなど、転移関連遺伝子群の発現低下を引き起こす。ベムラフェニブを用いてBRAFV600Eを抑制すると、その細胞増殖抑制作用とは無関係に、PGC1α–ID2–TCF4–インテグリン経路に作用することで転移が抑制される。以上より、我々の知見から、PGC1αはミトコンドリアのエネルギー代謝を維持し、平行して働く転写プログラムの直接的調節を介して転移を抑制することが明らかになった。従って、これらの回路の構成因子は、黒色腫の転移を抑制するのに役立つ新たな治療の機会となるかもしれない。

