材料科学:微細構造が安定なナノ結晶合金の極めて高いクリープ抵抗
Nature 537, 7620 doi: 10.1038/nature19313
平均結晶粒径が100 nm未満のナノ結晶金属は、同じ金属の粗粒結晶より室温での強度が高く、その一因は結晶粒径が大幅に小さいことにある。しかし、こうした高い強度は一般的に、クリープ抵抗など他の機械的性質のかなりの低下を伴うため、実用性は制限される。例えば、ナノ結晶銅のクリープ速度は、典型的な粗粒銅よりも約4桁高い。ナノ結晶材料のクリープ抵抗の劣化の一因は、粒界の体積分率が高くなることにある。粒界には長距離結晶秩序がなく、拡散クリープ、すべり、回転などの過程が生じる。本論文では、ナノ結晶銅–タンタル合金が、機械的安定性と熱安定性を保ちつつ、高い強度と極端な高温でのクリープ抵抗を同時に生じるという、さまざまな特性のこれまでにない組み合わせを有することを示す。この非混合合金群に関する先行研究では、それらの熱・機械的安定性と強度がこれまでに浮き彫りになっており、これがクリープなどより極端な条件下での研究の動機となった。我々は、剛性率の0.85~1.2%の範囲の応力をかけ、母材の融解温度(1356 K)の0.5~0.64倍のさまざまな温度において、10 −6 s−1未満の低い定常状態クリープ速度を見いだした。これは、大半のナノ結晶金属の値より6~8桁低い。我々のナノ結晶合金の特性の特異な組み合わせは、合金内部に粒界をピン止めする明瞭な原子ナノクラスターを形成する加工経路を通して実現された。このピン止めによって、粒界のすべりと回転に対するエネルギー障壁が大きくなり、極端に長い期間のクリープ条件下で結晶粒粗大化が抑制されて、結晶粒の動力学的安定性が改善される。今回の加工法によって、航空宇宙、海軍、民生インフラストラクチャー、エネルギーなど、高温でのさまざまな応用に使う、強度とクリープ抵抗が高く微細構造が安定な構造合金の開発が可能になるはずである。

