地球化学:地球の異常な142Nd組成の元素合成的起源
Nature 537, 7620 doi: 10.1038/nature18956
以前からあるパラダイムでは、地球のケイ酸塩部分(地殻とマントル)の多くの元素の化学組成や同位体組成はコンドライトと同じであるとされている。しかし、入手できる範囲の地球の試料の、ネオジム(Nd)同位体比142Nd/144Ndは、コンドライトのそれよりも高い。142Ndは現存しない146Sm(半減期1億300万年)の崩壊生成物であるため、この142Ndの相違から、こうした地球の試料のSm/Nd比はコンドライトよりも高い必要があるように思われる。高いSm/Nd比は、太陽系形成の最初の3000万年以内に起こった全球の分化時にもたらされたに違いなく、142Ndが涸渇した相補的な貯蔵庫が形成されて地球深部に隠れているか、衝突侵食によって宇宙空間へ失われたことを示唆している。この相補的な貯蔵庫が存在したのか、また、それが地球から失われたか否かについては議論となっており、地球のバルク組成、熱容量、構造の確定だけでなく、地球力学的進化のモードや時間スケールの絞り込みにも影響を与える。本論文では、地球の前駆天体はコンドライトと比べて、遅い中性子捕獲過程(s過程)の元素合成によって生成されるNdに富んでいたことを示す。このs過程過剰によって、より高い142Nd/144Nd比が生じる。この効果の補正をすると、コンドライトと地球の試料の142Nd/144Nd比は、5 ppmの精度では区別できない。従って、入手できる地球のケイ酸塩部分の試料とコンドライトとの142Ndの相違は、初期の分化過程ではなく、地球ではs過程Ndの比率が高かったことを反映している。そのため、今回の結果から、隠れた貯蔵庫や超コンドライト的地球モデルは必要でなくなり、全地球的組成のSm/Nd比がコンドライト的であったことが示唆される。コンドライトは、地球よりも太陽から遠い所で作られ、地球とは異なる太陽系前駆物質の混合物を含んでいるが、それにもかかわらず地球の総化学組成の良い代理指標となる。

