Letter
ナノ科学:カーボンナノチューブにおける半径に依存した大規模な流動すべり
Nature 537, 7619 doi: 10.1038/nature19315
水は、カーボンナノチューブ内では、界面の摩擦がほとんどないため極めて速い速度で移動することが、測定とシミュレーションによって見いだされている。こうした観察結果から、脱塩、ナノ濾過、環境発電などの応用にナノチューブ系の膜を使うことへの関心が集まっている。しかし、既存の理論では、これまで得られている数少ない実験結果に対して納得のいく説明がなされていないことから、ナノチューブ内部や水と炭素の界面における水輸送の厳密な機構については議論が続いている。実験結果がこのように不足しているのは、制御された系統的な研究によって個々のナノチューブを通る輸送が調べてられているにもかかわらず、単一のナノチューブの浸透率を明確に測定するという重要な技術的課題を満たしたものが1つもないためである。本論文では、水流が単一のナノチューブから周囲の流体中へ噴出する際の流体ダイナミクスから、個々のナノチューブを通る圧力に駆動される流れの速度を、染料を使わずにこれまでにない感度で測定できることを示す。今回の測定結果から、カーボンナノチューブには、半径に依存する予想外に大きな表面すべりがあり、カーボンナノチューブと結晶学的には似ているが電子的には異なる窒化ホウ素ナノチューブにはすべりがないことが明らかになった。2種類の系のこうした著しい相違は、それらの固液界面の原子スケールの細部に微妙な違いがあることに起因しているに違いなく、ナノ流体工学が、流体力学の連続的な描像が物質の原子的性質と出会う最前線であることを例証している。

