生態学:生態系の多機能性には複数の栄養段階での生物多様性が必要である
Nature 536, 7617 doi: 10.1038/nature19092
生物多様性が失われると、人間の依存するさまざまなサービスを提供する生態系の能力が低下することが、多数の実験から明らかになっている。しかし、実験では必然的に自然生態系の複雑性を単純化して、生態系機能を促進する環境や土地利用といった他の重要な要因を制御することが普通である。また、これまでの研究は一般的に、単一の栄養段階群の多様性に着目しており、生物多様性の喪失が多くのタクソンにわたって起こるという事実や、どの栄養段階群でも、その機能的影響が他の栄養段階群の存在数量や多様性に依存する可能性があることを考慮していない。今回我々は、地上および地中の4600のタクソンを含む9つの栄養段階群の種数および存在数量と14種類の生態系サービスおよび機能との関係、ならびにその同時供給(すなわち多機能性)との関係を、150の草原で解析した。その結果、複数の栄養段階群の種数(多栄養段階の種数;multitrophic richness)が多いと、生態系サービスに対して、個々のどの栄養段階群の種数(生物多様性の尺度として最も広く利用されている植物種数も含む)よりも大きい正の影響を及ぼすことが明らかになった。平均すると、各生態系サービスに対して3つの栄養段階群が影響を及ぼしており、それぞれの栄養段階群は少なくとも1つのサービスに影響していた。多栄養段階の種数の多さは特に、「調整」や「文化」のサービスと多機能性に有益だったが、複数の栄養段階群における種個体数またはバイオマスの総数量(多栄養段階の存在数量;multitrophic abundance)の変化は、基盤サービスに正の影響を与えていた。多栄養段階の種数および存在数量は、非生物的条件や土地利用強度と同じくらい強く生態系機能を促進しており、このことから既報の実験結果が実際の生態系に拡張された。一次生産者、草食性昆虫および微生物分解者は、それらの種数または存在数量と複数の生態系サービスとの強力で高頻度な正の関連性が示すとおり、生態系機能の特に重要な促進要因だと考えられる。今回の結果は、多栄養段階の種数および存在数量が生態系機能の基盤であることを示しており、これまでは単一の栄養段階群に着目したことで生物多様性の機能的重要性がかなり低く見積もられてきたことを明らかにしている。

