神経科学:恐怖行動を時間的に制御する前頭前野ニューロン集団
Nature 535, 7612 doi: 10.1038/nature18630
ニューロン集団の協調と同調による正確なスパイクのタイミング調節は、感覚処理および認知処理のための効果的かつ柔軟な符号化機構である。皮質および皮質下領域において細胞集団の形成に非常に重要なのはニューロンの振動で、これによりスパイク発火活動のタイミングが正確に制御できる。このような形の符号化は、感覚処理や空間学習で調べられてきたが、情動行動の符号化での役割は知られていない。恐怖行動は、分散した脳構造の活性化に依存するが、中でも背内側前頭前野(dmPFC)は、恐怖記憶の発現に重要であることが知られている。dmPFCでは、脅威を予測させる手掛かりに対するニューロンの一過的な活性化(発火率符号化機構)が条件付け恐怖反応と相関しており、有害刺激と中立な刺激の識別に役立っている。しかし、この機構では、刺激提示時以外で見られるすくみ行動を説明できず、dmPFCにおける一般的なスパイク-時間符号化機構のすくみ行動に対する寄与については解明が待たれている。今回我々は、単一単位記録と局所電場電位記録を組み合わせて光遺伝学的な操作とともに用い、dmPFCでは条件付け恐怖の発現と、ニューロン群が機能的集団に構成されていくことに因果関係があることを示す。恐怖行動の間、複数のニューロン集団が振動の上昇相中に活性化し、それと同時に4 Hzの振動が発生する。ニューロン振動の上昇相でdmPFCニューロンを光遺伝学的に選択的に抑制すると条件付け恐怖応答は抑制され、下降相で抑制すると条件付け恐怖応答は促進された。これらの結果から、dmPFCのニューロン集団の形成を動的に調節して恐怖反応の正確なタイミングを制御する新たな相特異的符号化機構が明らかになった。

