構造生物学:NAD+、NADHおよびデホスホCoAによるRNAの5′キャップ形成機構
Nature 535, 7612 doi: 10.1038/nature18622
RNAの5′末端の化学的性質は、RNAの安定性やプロセシング、局在化、翻訳効率を決める重要な要因であり、こうした性質がまた別の「エピトランスクリプトミック」な遺伝子調節をもたらしているという説が提案されている。最近、一部の細菌RNA種が、真核生物のRNAの5′末端に見られる7-メチルグアニル酸からなる「キャップ」構造によく似た5′末端構造を持つことが明らかになっている。特に、5′末端にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を持つRNA種や3′-デホスホ補酵素A(dpCoA)を持つRNA種は、グラム陰性菌でもグラム陽性菌でも見つかっている。NAD+、還元型NAD+(NADH)およびdpCoAキャップは、7-メチルグアニル酸キャップの付加に似たやり方で、転写開始後にRNAに付加されるという説が提案されている。しかし今回我々は、NAD+、NADHおよびdpCoAが、細胞のRNAポリメラーゼ(RNAP)によるde novo転写開始のための非標準的開始ヌクレオチド(NCIN)として働いて、転写開始の最中にRNAに取り込まれることを示す。さらに、細菌のRNAPと真核生物のRNAP IIがどちらもNCINキャップを取り込むこと、転写開始部位とその上流のプロモーターDNA塩基配列がNCINキャップ形成の効率を決めること、NCINキャップ形成がin vivoで実際に起こること、およびNCINキャップ形成が機能的影響をもたらすことも明らかにした。また、NCINキャップを持つRNA産物を含む転写開始複合体の結晶構造も決定した。今回の結果によって、NCINキャップ形成の機構と構造基盤が明らかになり、NCINを介した「ab initioキャップ形成」があらゆる生物で起こっている可能性があることが示唆された。

