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幹細胞:骨髄細胞系譜の初期選択はタンパク質PU.1とGATA1のランダムな比率で開始されるわけではない
Nature 535, 7611 doi: 10.1038/nature18320
造血系の細胞系譜決定の基盤にある機構はいまだに議論の的になっている。細胞系譜に関連する転写因子群は、細胞系譜の再プログラム化や正の自己調節、相互抑制の能力を持ち、運命拘束を受けていない細胞集団で発現していることが報告されている。このことから、細胞系譜の選択は、細胞自律的に開始し、ランダムに変動する交差拮抗的な転写因子の確率論的な切り替えによって決定されるという仮説が導かれた。しかし、この仮説はスナップショット解析や集団平均的解析からのRNA発現データに基づいて立てられたものであり、従って、細胞系譜の選択についての別のモデルを排除できない。今回我々は、新規のレポーターマウス系統とライブ画像化法を用いて、転写因子GATA1とPU.1(別名SPI1)の単一細胞での長期の連続的定量化を行った。個々の造血幹細胞を、巨核球–赤芽球系譜および顆粒球–単球系譜への分化過程全体にわたって解析した。観察された発現動態は、PU.1とGATA1間の確率論的な切り替えが先に起こり、これが巨核球–赤芽球系譜あるいは顆粒球–単球系譜への分化を決定させるという仮説とは相いれないものだった。得られた知見はむしろ、これらの転写因子が、すでになされた細胞系譜の選択を遂行および強化しているにすぎないことを示唆している。これらの結果は、骨髄細胞系譜の初期選択について現在主流となっているモデルに疑問を投げ掛けるものである。

