がん治療:SHP2ホスファターゼのアロステリック阻害は受容体型チロシンキナーゼによる発がんを抑制する
Nature 535, 7610 doi: 10.1038/nature18621
PTPN11がコードする非受容体型プロテインチロシンホスファターゼSHP2は、増殖因子受容体シグナル伝達の下流経路で重要な役割を果たしており、また、発がん性が初めて報告されたチロシンホスファターゼでもある。SHP2の活性化変異は、ヌーナン症候群などの発生異常と関連付けられており、白血病や肺がん、乳がん、神経芽細胞腫など複数種類のがんにおいても見つかっている。SHP2の発現は広範囲にわたって見られ、主にRAS–ERKシグナル伝達経路の活性化を介して細胞の生存や増殖を調節する。またSHP2は、PD-1(programmed cell death 1)とBTLA(B- and T-lymphocyte attenuator)が関わる免疫チェックポイント経路の主要なメディエーターでもある。その活性低下によって腫瘍細胞の増殖が抑制されることから、SHP2はがん治療の標的候補となっている。本研究では、極めて強力(IC50 = 0.071 μM)かつ選択的で経口投与可能な低分子のSHP2阻害物質SHP099の発見と、この物質がSHP2を自己阻害型のコンホメーションで安定化することを報告する。SHP099は、N末端のSH2ドメイン、C末端のSH2ドメイン、およびプロテインチロシンホスファターゼドメインの界面で3つのドメインに同時に結合し、アロステリックな機構によりSHP2の活性を抑制する。SHP099はRAS–ERKシグナル伝達を阻害することで、in vitroでは受容体型チロシンキナーゼによるヒトがん細胞の増殖を抑制し、マウス腫瘍異種移植片モデルでも効果を示した。総合するとこれらのデータは、SHP2の薬理学的な阻害が、がんに対する有効な治療手段となることを示すものである。

