ウイルス学:トレミフェンはエボラウイルスの糖タンパク質と相互作用してこれを不安定化させる
Nature 535, 7610 doi: 10.1038/nature18615
エボラウイルス(EBOV)は、西アフリカでの最近の深刻な大流行など、致死的感染の大発生を繰り返し起こしてきた。現在、エボラウイルス病に対する承認された治療薬、あるいはワクチンは存在しない。EBOVは1種類の糖タンパク質(GP)からなる三量体によって修飾された膜エンベロープを持ち、GPはフリンによって切断されてGP1とGP2というサブユニットを形成する。宿主細胞への付着、エンドソームへの侵入、膜融合に関わっているのはGPだけであるため、GPは抗ウイルス薬開発の主要な標的となっている。今回我々は、EBOV GPのリガンドが結合していない構造と、GPと抗がん剤トレミフェンとの複合体と鎮痛剤イブプロフェンとの複合体の高分解能構造を、我々が知るかぎりで初めて報告する。高分解能でのアポ構造から、GP分子のより完全で正確な構造が得られ、抗体や受容体との結合によって導入されるコンホメーション変化を明らかにすることができた。意外にも、トレミフェンもイブプロフェンも付着(GP1)サブユニットと融合(GP2)サブユニットの間のキャビティに結合している。このキャビティは大きなトンネルの入り口に位置していて、このトンネルは三量体を構成する別の単量体から延びている、3回回転軸で等価となるトンネルにつながっている。タンパク質–薬剤のGP1およびGP2との相互作用は、どちらも主に疎水性である。結合部位の内表面に並んでいる残基は、マールブルグウイルス(MARV)以外のフィロウイルスで高度に保存されていて、MARVはこれらの薬剤とは結合しない可能性がある。サーマルシフトアッセイの結果から、トレミフェン結合後にGPの融解温度が最大で14°C低下するが、イブプロフェンはわずかな低下しか引き起こさないので、阻害剤としてそれほど強力ではない。これらの結果から、阻害剤の結合がGPを不安定化し、GP2の時期尚早な放出を引き起こすため、ウイルス膜とエンドソーム膜の融合が防止されると考えられる。従って、今回の複合体構造は阻害機構を明らかにしており、さらに強力な抗EBOV薬の開発につながると考えられる。

