Letter

ウイルス学:宿主のヌクレオソームと結合して免疫の危険シグナルを隔離するウイルスコアタンパク質

Nature 535, 7610 doi: 10.1038/nature18317

ウイルスタンパク質は宿主タンパク質の構造と機能を模倣して、細胞過程を変化させ、自然免疫防御を障害する。小さな塩基性タンパク質はウイルスと細胞のいずれのDNAゲノムも凝縮させ、調節する。ヌクレオソームは細胞のクロマチンの反復単位であり、自然免疫応答で重要な役割を担っている。ウイルスがコードする塩基性のコアタンパク質はウイルスゲノムを凝縮させるが、宿主クロマチンの構造や機能に対する影響についてはまだ調べられていない。アデノウイルスは、細胞のヒストンに類似するプロテインVIIと呼ばれる、高度に塩基性のタンパク質をコードする。プロテインVIIはウイルスDNAと結合し、ウイルスゲノムとともにウイルス粒子内へ組み込まれるが、プロテインVIIが細胞のクロマチンに影響を及ぼすかどうかについては知られていない。今回我々はプロテインVIIが細胞のクロマチンを変化させることを示し、これによって、プロテインVIIはヒト細胞でアデノウイルス感染時の抗ウイルス応答に影響を及ぼすという仮説を立てるに至った。我々は、プロテインVIIはヌクレオソームと複合体を形成し、DNAへの到達しやすさを制限することを見いだした。また、クロマチンへの局在の原因となる、プロテインVIIへの翻訳後修飾を明らかにした。さらにプロテオーム解析により、プロテインVIIのみで宿主クロマチンのタンパク質の構成を変化させるのに十分であることを示した。我々は、プロテインVIIがHMGB(high-mobility-group protein B)ファミリーのメンバーであるHMGB1、HMGB2、HMGB3のクロマチンでの滞留に必要かつ十分であることを明らかにした。HMGB1は炎症刺激に応答して積極的に放出され、危険シグナルとして働いて免疫応答を活性化させる。我々は、プロテインVIIがin vitroでHMGB1と直接的に結合することを示し、さらにマウスの肺にプロテインVIIを発現させるだけで、気管支肺胞洗浄液中の、炎症によって誘導されたHMGB1の量や好中球の動員を低下させるのに十分であることを明らかにした。以上より、我々のin vitroおよびin vivoの結果から、プロテインVIIがHMGB1を隔離し、その放出を妨げられることが示された。今回の研究は、細胞外免疫シグナル伝達の制御に、ヌクレオソームへの結合を利用するというウイルスの戦略を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度