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構造生物学:細菌の細胞壁合成でのリピドI合成阻害に関する構造的知見

Nature 533, 7604 doi: 10.1038/nature17636

抗生物質耐性菌感染は、公衆衛生に対する深刻な問題である。細菌細胞壁のペプチドグリカンの生合成は、抗生物質開発の良い標的となっている。MraY(ホスホMurNAc-ペンタペプチドトランスロカーゼ)は、ペプチドグリカン生合成において、膜内で行われる重要な第1段階を触媒する酵素である。抗菌活性を持つ天然物である多数のヌクレオシド系化合物がこの酵素を標的として阻害することから、この酵素は新しい抗生物質開発の標的として非常に期待できる。しかし、MraYを標的とする抗生物質で臨床使用できるものがこれまで開発されていないのは、この酵素の阻害機序に関して構造的知見が得られていないことが主な原因である。今回我々は、超好熱性細菌Aquifex aeolicus由来のMraY(MraYAA)が、その阻害天然物であるムライマイシンD2(MD2)と複合体を形成した状態の結晶構造を決定した。MD2との結合に応じてMraYAAの活性部位周辺に非常に大きなコンホメーション再編成が起こり、その結果、ヌクレオシド結合ポケットとペプチド結合部位が形成されることが明らかになった。MD2は、二極プラグをソケットに差し込むような形で、ヌクレオシド結合ポケットに結合する。さらに、隣接するペプチド結合部位との間に生じる相互作用も、MD2をMraYAAに結び付け、親和性を高める働きをする。意外にも、MD2はMraYAAの触媒作用に必要な3個の酸性アミノ酸残基や補因子のMg2+とは結合しない。このことから、MD2のMraYAAへの結合様式は、天然の基質であるUDP-MurNAc-ペンタペプチドと部分的には一致するが、大きく異なると考えられる。MraYAAと基質との結合にはピロリン酸や糖部分が不可欠だが、MD2ではこれらの要素が必要とされなくなる仕組みを含めて、我々はMD2とMraYAAとの結合の原理を明らかにした。MraYのコンホメーションの柔軟性が、構造の異なる多くの阻害剤の標的になる理由かもしれない。これらの知見から、MraYだけでなく、そのパラログであるWecAとTarOを標的とする新しい阻害剤の設計にも役立つ情報が得られるだろう。

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