物性物理学:近接結合による高温強磁性トポロジカル絶縁相
Nature 533, 7604 doi: 10.1038/nature17635
トポロジカル絶縁体は、時間反転対称性によって保護された導電性の表面状態を示す絶縁物質であり、そこでは電子のスピンと運動量が同期している。この特異な特性から、次世代のエレクトロニクスデバイス、スピントロニクスデバイス、量子計算デバイスを生み出す新しい機会が開かれる。トポロジカル絶縁体に特有の量子コヒーレントな特徴を損なうことなく、トポロジカル絶縁体系へ強磁性秩序を導入すれば、いくつかの予測されている物理現象を実現できる可能性がある。特に、スピン散乱中心を導入することなくトポロジカル絶縁体表面の特定の位置にロバストな長距離磁気秩序を実現すれば、デバイスの新しい可能性が開かれるかもしれない。本論文では、スピン偏極中性子反射率実験を用い、二層系において、強磁性絶縁体(EuS)とトポロジカル絶縁体(Bi2Se3)の結合によるトポロジカルに増強された界面磁性を実証する。EuSは、低温(17 K未満)でのみ強磁性秩序化することが分かっているにもかかわらず、この界面強磁性は室温まで維持された。トポロジカル絶縁体表面の大きなスピン–軌道相互作用とスピン–運動量同期に起因して界面に生じた磁性によって、この二層系の磁気秩序化温度(キュリー温度)が大きく上昇している。強磁性は界面からBi2Se3中へ約2 nm広がっている。強磁性交換相互作用が短距離性であるため、時間反転対称性はトポロジカル絶縁体の表面近くでのみ破れ、そのバルク状態は影響を受けずに済む。このような人工的に作られたトポロジカル絶縁体から生じるトポロジカルな磁気電気応答によって、磁化ダイナミクスの電場による効率の良い操作が可能となり、将来のスピンを利用した技術のための、エネルギー効率の良いトポロジカル制御機構が得られる可能性がある。

