Letter

細胞生物学:有害なミトコンドリアゲノムはミトコンドリア折りたたみ不全タンパク質応答によって維持され増加する

Nature 533, 7603 doi: 10.1038/nature17989

ミトコンドリアゲノム(ミトコンドリアDNA;mtDNA)には、酸化的リン酸化(OXPHOS)に関わる極めて重要なタンパク質がコードされている。細胞内には非常に多くのmtDNAが存在するため、1個のmtDNAに欠失があってもほとんど影響はない。だが欠失のあるミトコンドリアゲノムの割合が増えてOXPHOSが低下すると細胞が機能不全に陥る。例えば、カーンズ・セイヤー症候群はmtDNAの1か所の欠失という変異型によるヘテロプラスミーが原因である。もっと広く見れば、個々の筋細胞やドーパミン作動性ニューロンで、老化の過程でmtDNAに欠失が集積することが観察されている。しかし、mtDNAの欠失が許容される仕組みや、体細胞内で欠失が増えていく仕組みは解明されていない。細胞がOXPHOSの機能不全に対処する仕組みの1つに、ミトコンドリア折りたたみ不全タンパク質応答(UPRmt)の活性化がある。この転写応答は転写因子ATFS-1の働きで起こり、欠陥のあるミトコンドリアの回復と再生を促進する。今回我々は線虫の一種Caenorhabditis elegansを使い、3.1キロ塩基の欠失があって4個の必須遺伝子が失われたmtDNA(ΔmtDNA)と野生型mtDNAの両方を安定的に発現するヘテロプラスミーが見られる株を選んで、有害なmtDNAの維持と増加にATFS-1が果たす役割を調べた。このヘテロプラズミックな株はΔmtDNAが60%を占めるが、ミトコンドリアの機能不全は中程度で、UPRmtが構成的に活性化している。ATFS-1の機能を障害すると、ΔmtDNAがほぼ10分の1に減少し、全体での割合は7%にまで下がった。mtDNAのヘテロプラスミーという状況下では、OXPHOSの異常によって引き起こされるUPRmt活性化は、ミトコンドリアの生合成と動態を促進することでOXPHOSを回復させようとするが、それが有害なmtDNAが増加あるいは維持される結果を招くと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度