光物理学:タイミング不確実性が極めて大きくノイズの多いデータから得られるダイナミクス
Nature 532, 7600 doi: 10.1038/nature17627
ある系の「スナップショット」を記録した時間が正確に分かっていないと、動的な情報を再現しにくくなり、事象の順番が混乱する可能性がある。例えばX線自由電子レーザーでは、光トリガー(「ポンプ」)パルスとX線プローブパルスの到着時間の間の不確実性、いわゆるタイミングジッターがX線パルスの長さを最大で2桁上回ることがあるため、正確であるはずのこの種の装置の時間分解能が損なわれる。タイミング不確実性よりも短い時間スケールでは動的情報をほとんど利用できないと幅広く考えられているため、タイミング不確実性を減らすさまざまなハードウエア方式が得られている。こうした方式は費用が掛かる上、1つの実験法に限定される傾向があり、地質学的事象の発生時など、不明確な条件下や制御されていない条件下で得られた記録には使うことができない。本論文では、特異値分解と非線形ラプラシアンスペクトル解析に基づいて、ノイズの多いスナップショットをタイミング不確実性よりも十分に長い時間にわたって高密度に収集することによって、系の履歴とダイナミクスを回復できるデータ解析法を示す。このアルゴリズムの能力は、300フェムト秒のタイミング不確実性で記録されたX線自由電子レーザーのノイズの多い実験データから、数フェムト秒の時間スケールでその基本的なダイナミクスを抽出することによって実証された。今回の解析で、窒素分子のクーロン爆発のポンプ–プローブ実験から得られたノイズの多いデータセットを使って、15フェムト秒という短い周期の成分からなる振動波束と、これまで十分に調べられていなかったより速い変化が明らかになった。今回の方法は、動的情報や履歴情報がタイミング不確実性によって損なわれている場合に常に適用できる可能性がある。

