Letter
神経科学:捕食者のにおいに対するストレスホルモン応答に関わる特異的な嗅覚野領域
Nature 532, 7597 doi: 10.1038/nature17156
危険に対する本能的反応は種の維持に不可欠であり、動物界を通じて広く見られる。マウスでは、捕食者のにおいによって行動の変化をはじめとする本能的な恐怖反応が誘発され、それとともに血中のストレスホルモンが急増して体の複数の系を動員し、差し迫った危険から逃れようとする。鼻で感知した捕食者のシグナルを嗅覚系がどのように伝えてこれらの応答を生じさせるのかはよく分かっていない。今回我々は、マウスで捕食者の揮発性におい物質に対するストレスホルモン応答を誘発する特異的な嗅覚野領域を明らかにした。単シナプス性および多シナプス性のウイルストレーサーを用いることにより、ストレスホルモンのレベルを制御している視床下部の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)ニューロンへは、嗅覚野の複数の領域からシグナルが伝達されていることが分かった。しかし、CRHニューロンの上流で捕食者の揮発性におい物質によって活性化されるニューロンは、皮質の扁桃体–梨状葉移行野(AmPir)という1つの狭い領域のみに存在していた。AmPirを化学遺伝学的に刺激すると、CRHニューロンが活性化され、血中のストレスホルモンが増加し、本能的な恐怖反応を模倣できた。さらに、AmPirを化学遺伝学的に抑制すると、恐怖行動には影響を与えずに、捕食者のにおいに対するストレスホルモン応答が著しく抑制された。これらの知見は、嗅覚野の5%にも満たない狭い領域であるAmPirが、捕食者の揮発性におい物質に対する本能的恐怖反応のうちホルモンが関与する部分に重要な役割を果たしていることを示唆している。

