複雑ネットワーク:線虫Caenorhabditis elegansの老化における時間尺度の変化
Nature 530, 7588 doi: 10.1038/nature16550
老化は死へ近づいていく過程で、無作為な側面を持つため、均質な生物集団内であっても寿命に大きなばらつきが生じる。この確率論的挙動を研究することで、分子機構と、寿命を決定する老化過程とを結び付けることができる可能性がある。本研究で我々は、大規模集団から高精度の死亡率統計データを集め、食餌、温度、酸化ストレスへの曝露の変化、熱ショック因子hsf-1、低酸素誘導因子hif-1、インスリン/IGF-1経路構成要素のdaf-2、age-1およびdaf-16などの遺伝子の破壊など多様な介入の全てが、時間を見かけ上引き延ばしたり縮めたりすることにより、寿命の分布を変化させることを見いだした。このような時間尺度の変化を起こすためには、それぞれの介入は、死のリスクのあらゆる生理学的決定因子を、成体期を通じて同じ程度に変化させているはずである。従って、線虫の一種Caenorhabditis elegansにおける生物体としての老化は、さまざまな組み合わせの介入に協調して応答する生理学的側面が関与しているようである。このようにして、時間尺度の変化から1つの新たな状態変数r(t)が明らかになり、この変数は死のリスクを左右し、その平均の減衰の動態に関与するのは、単一の有効老化速度定数krである。時間尺度の変化を生み出す介入は、krを変化させるだけで寿命に影響を及ぼす。このような介入は、成体期初期に一過性に適用された場合でもkrを一時的に変化させ、それに伴いrの変化率が一過性に増大あるいは減少し、その後の寿命に永続的な影響をもたらす。どのような遺伝学的、環境的状況でも不変な生物体老化動態が存在することは、寿命を決定する老化の側面に寄与する特定の分子過程について、その様式や範囲を評価するための新たな量的枠組みの基礎となるだろう。

