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神経科学:快記憶エングラムの活性化によってうつ様行動を抑制する

Nature 522, 7556 doi: 10.1038/nature14514

不安や気分障害を含む多くの行動異常に関して、ストレスは強い環境リスク要因になると考えられている。動物モデルでも、慢性的ストレスによって、例えば動機付けの低下や行動負荷に対する異常応答、無快感など、限定的ながら定量可能な、うつ病に関連する行動障害が見られる。海馬はストレス応答を抑制的に調節し、ストレス誘発性障害に伴う認知や記憶のさまざまな局面に関係すると考えられているが、行動の改善をもたらすのに十分なそのニューロン基盤についてはほとんど分かっていない。今回我々は、マウスでストレス誘発性のうつ病関連行動を、それ以前の快体験の際に活動した海馬歯状回細胞を光遺伝学的に再活性化することで、迅速に救済した。脳全域を対象とした組織学的解析を、薬理学的手段および投射路特異的な光遺伝学的阻害実験と組み合わせて行うことにより、この迅速な救済をもたらす回路の候補として、海馬–扁桃体–側坐核経路のグルタミン酸作動性活動を同定した。また、快記憶に関連した海馬細胞を慢性的に再活性化すると、光刺激以降の時点でもストレス誘発性行動障害の救済や神経産生が見られた。今回のデータから、快記憶の人為的な活性化はうつ様行動を抑えるのに十分なことが示唆され、海馬歯状回の記憶エングラム細胞群が、不適応行動態様への治療的介入の標的となり得ることが示された。

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