発生生物学:ヒストンH3.3は胚性幹細胞で内在性レトロウイルス配列のサイレンシングに必要である
Nature 522, 7555 doi: 10.1038/nature14345
転位性遺伝因子は哺乳類ゲノムの約40%を構成している。転位性遺伝因子は、遺伝子あるいはその調節配列の重複や欠失を引き起こすことで、遺伝的多様性、適応や進化に能動的な役割を果たしており、また、それ自体が隣接する遺伝子の選択的プロモーターとして機能できるために、転写の非標準的な調節を行うことができる。しかし、転位性遺伝因子の活性は有害なゲノム不安定性につながることがあり、宿主は転位性遺伝因子の移動能を適切に抑制する機構を進化させてきた。最近の研究で、マウス胚性幹細胞では転位性遺伝因子に属する内在性レトロウイルスエレメント(ERV)でLTR(long terminal repeat)を含むものが、ESET(別名SETDB1あるいはKMT1E)およびKAP1(KRAB-associated protein 1;別名TRIM28)を含むコリプレッサー複合体によるヒストンH3リシン9のトリメチル化(H3K9me3)を介してサイレンシングされることが実証された。今回我々は、ヒストンバリアントH3.3による置換が、クラスIおよびクラスII のERV[特に、ETn(early transposon)/MusDファミリーやIAP(intracisternal A-type particle)のERV]に豊富に見られることを示す。このようなエレメントサブセットへのH3.3の集積は、ATRX(α-thalassaemia/mental retardation syndrome X-linked)やDAXX(death-domain-associated protein)を含むH3.3シャペロン複合体に依存している。ERVへのDAXX、H3.3およびKAP1の動員は共依存的であり、また、ESETの上流で起こることで、H3.3とERVに結合しているH3K9me3とが結び付けられる。H3.3が欠失すると、ERVではH3K9me3が減少するため、IAPのレトロ転位の増加とともに、隣接する内在性遺伝子の抑制解除や調節異常が引き起こされることは重要である。我々の研究は、H3.3およびH3K9me3の両方が存在するという特徴を持つ珍しいヘテロクロマチン状態を明らかにしたもので、また、胚性幹細胞でのERVのレトロ転位の制御にH3.3が担う重要な役割を確証している。

