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幹細胞:薬剤による内在性幹細胞の調節がin vivoでの機能的な再ミエリン化を促進する

Nature 522, 7555 doi: 10.1038/nature14335

多発性硬化症には、異常な自己免疫応答と中枢神経系における再ミエリン化の進行性不全が関与する。神経変性やその後の障害を防ぐためには、新たなオリゴデンドロサイトの産生を介した再ミエリン化が必要であるが、最近の治療はもっぱら免疫系のみを標的としている。オリゴデンドロサイト前駆細胞は中枢神経系の幹細胞であり、ミエリンを形成するオリゴデンドロサイトの主な供給源である。これらの細胞は、多発性硬化症患者で脱髄(脱ミエリン化)領域に多く存在していながら、分化することができないことから、薬理学的介入の細胞標的となる。内在性のオリゴデンドロサイト前駆細胞でミエリン形成を高める治療化合物を見つけるために、我々はマウスの多能性胚盤葉上層幹細胞に由来するオリゴデンドロサイト前駆細胞に対して、生物活性低分子ライブラリーのスクリーニングを行った。その結果、in vitroにおいてナノモル濃度で選択的に前駆細胞から成熟オリゴデンドロサイトへの誘導を促進する7つの薬剤が見つかった。そのうちの2つの薬剤、ミコナゾールとクロベタゾールは、小脳スライスの器官培養と、出生後初期仔マウスのin vivoにおいて、早熟なミエリン形成の促進に効果を示した。これらの2つの薬剤をそれぞれ、リゾレシチンを用いた限局性脱髄化マウスモデルに全身投与すると、新たなオリゴデンドロサイト数が著しく増加し、再ミエリン化が促進した。慢性進行性多発性硬化症の実験的自己免疫脳脊髄炎マウスモデルで疾患のピーク時に、2つの薬剤をそれぞれ投与すると、疾患の重症度が著しく軽減された。免疫応答解析から、ミコナゾールは再ミエリン化剤として直接的に作用するが免疫系には影響を及ぼさず、一方、クロベタゾールは強い免疫抑制剤であるとともに再ミエリン化剤でもあることが分かった。機構研究では、ミコナゾールとクロベタゾールは、それぞれMAPキナーゼと糖質コルチコイド受容体シグナル伝達を介して、オリゴデンドロサイト前駆細胞で作用することを示す。さらに、どちらの薬剤もin vitroで、ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞からのヒトオリゴデンドロサイトの産生を促進する。以上のことから、ミコナゾールおよびクロベタゾール、あるいはそれらを構造的に改変した誘導体を使って、患者で再ミエリン化が促進されるかどうかを試験することに対する理論的根拠が示された。

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