Letter
生物地球化学:32億年前のモリブデン型ニトロゲナーゼによる生物的窒素固定を裏付ける同位体の証拠
Nature 520, 7549 doi: 10.1038/nature14180
窒素は全ての生物にとって不可欠な栄養素であり、生命が出現した当初から利用可能であったはずである。熱水系での還元や光化学反応、雷放電などの非生物的な過程によって、大気中のN2が、同化可能なNH4+やHCN、NOx種(これらは固定窒素と総称される)に変換されたと考えられる。しかし初期の地球には、こうした窒素源が少なかったために原始生物圏のサイズは大きく制限されていた可能性がある。そのため、大気中のN2を有機NH4+に還元する窒素固定酵素ニトロゲナーゼの進化は、生物が放散する上で重要な革新的事象の1つであったが、その進化の時期は明らかになっていない。本論文では、ぶどう石–パンペリー石相から緑色片岩相の変成度を持つ32億~27億5000万年前の海成および河成堆積岩の窒素同位体比が、平均で0.0 ± 1.2‰であることを示す。これらのデータは非生物的な過程では説明することが難しく、従って生物的な窒素固定を示唆しており、そうした窒素固定ではおそらく、同位体分別値が負に著しく大きな他の型のニトロゲナーゼではなくモリブデン型のニトロゲナーゼを使った可能性が高い。今回のデータは、生物的な窒素固定が遅くとも32億年前には始まっていたことを示しており、大酸化事変から大きくさかのぼる中始生代の海洋ではすでにモリブデンが生物にとって利用可能であったことを示唆している。

