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地球化学:月のタングステン同位体によるレイトベニアの証拠

Nature 520, 7548 doi: 10.1038/nature14360

月の起源に関して最も広く受け入れられている理論によると、地球と巨大天体との衝突によって、月が形成され、地球のコア形成の最終段階も始まった。コア形成によって地球の始原的なマントル[地球の全ケイ酸塩部分(bulk silicate earth)]から高親鉄性元素(HSE)が除かれるはずであるが、HSEの存在量は予想よりも多い。この超過分に対する1つの説明は、始原物質の「レイトベニア(late veneer)」が、地球の全ケイ酸塩部分にコア形成後に付加されたということである。この仮説の検証には、タングステン(W)同位体が次の2つの理由から有用である。第一に、レイトベニア物質と地球の全ケイ酸塩部分の182W/184W比が異なっており、第二に、W付加量はその大きさに比例して月よりも地球に多いからである。つまり、レイトベニアが実際に起こったのであれば、地球の全ケイ酸塩部分と月の182W/184W比は異なっていなければならない。さらに、182W/184W比の異なる衝突天体のマントルとコアの物質が、月を形成した巨大衝突中に原始地球と混合した可能性があるため、巨大衝突が182Wに違いをもたらした可能性もある。しかし、月の182W/184W比はこれまで、レイトベニアや巨大衝突の痕跡を特定できるほどの精度で測定されたことはない。本論文では、より精度の高い測定技術を使い、現在の地球の全ケイ酸塩部分と比べて月の182W は27 ± 4 ppm多いことを示す。この超過分は、HSEの分類学から推測される組成や全質量を有するレイトベニアによって生じたと予想される182Wの差と一致する。ゆえに、我々のデータは、レイトベニア仮説によって予測されているように、地球の全ケイ酸塩部分内のHSE存在量は巨大衝突とコア形成の後に増大したことを独立に示している。しかし、意外なことに、巨大衝突を通して生じたはずであるにもかかわらず、レイトベニア以前に地球の全ケイ酸塩部分と月の間で182Wの不一致はなかったことが見いだされた。レイトベニア前の地球の全ケイ酸塩部分と月の均一な182W量の起源は不可解で、月の起源の現在のモデルに疑問を投げ掛けるものである。

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